夜勤を伴う病棟勤務の看護師が、ワークライフバランスを図ることは難しい。育児や家族の介護という家庭の責務を担う看護師は、仕事と両立させるために、常勤から比較的楽な勤務の非常勤に移行するケースが少なくない。非常勤の立場で日勤だけの病棟勤務になれば、ほぼ定時に退勤できて、ワークライフバランスを図りやすくなるだろう。ただし、夜勤手当が付かないと、一般的に非常勤の給与は著しく低くなってしまう。結局、非常勤の日勤のほかに、夜勤をアルバイトとして入れることもある。すると、ワークライフバランスが難しくなり、何のために非常勤にしたのかわからなくなるという事態に陥るのだ。
そこで、日勤だけでも高給の職場に人気が集まっている。たとえば、美容外科や脱毛クリニックが挙げられるだろう。こうした医療機関は、原則として完全予約制で、毎日定時に退勤できるうえ、夜勤を免れない病棟勤務より給与が高いことも多い。一般的に、美容に対する関心は高く、安定した需要が見込めるのだ。また、救急医療のように患者の生死を左右する診療の場面もほとんどなく、精神的負担も小さいと言えるだろう。さらに、夜勤専門看護師という勤務形態を設定する一方、日勤のみや日に6時間程度の短時間勤務の正規職員を募集する医療機関も現れた。
こうした試みは、看護師の勤務形態を多様化し、働き易い環境の選択肢を増設することにより、ワークライフバランスを図りながら勤務する看護師を増やし、潜在看護師を減らす目的のもとに継続されている。